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SDR受信機RTL-SDR.COM V3の導入と
AOR AR5000シリーズのSDR受信機化

2023.01.04 UP


初めに

 ネット検索をしているとAOR AR5000をSDR受信機化する方法があるという個人ブログページを見つけました。

 AR5000の背面にあるIF出力10.7MHz(BNCオス端子)をSDR受信機のDX PATROLに接続すると、AR5000で受信してSDRソフトでバンドスコープのように周波数帯域の様子を見たり、逆にSDRソフトでAR5000を受信操作したり、AR5000で受信した電波の受信帯域幅IFをSDRソフトで自由に可変することが可能になるというものです。

旅の途中 AR5000をSDRで受信
https://travelx.ddns.net/DSP_Radio/AR-5000/AR5000.html

 これができれば、SDR受信機より感度が良い、私が所持しているAOR AR5000A+3とAOR AR5000(当記事に出てくる両機の機能は同じため、以下、単にAR5000とします)を使って、帯域録音や受信帯域幅の自由可変ができる最強の受信機器ができるのではないかと夢が広がりました。

 上記ブログにはAR5000とSDR受信機の接続方法、操作方法、DX PATROL以外のSDR受信機も使えるのかどうかなどは記載されておらず、私はハード面やSDR受信機の知識が乏しいため、BCL/DX仲間にお尋ねしてアドバイスを頂き、AR5000のIF出力10.7MHzからケーブルをSDR受信機のアンテナ入力に接続して、SDRソフトで10.7MHzに合わせれば良いことがわかりました。SDR受信機はRTL-SDRならRTL-SDR.COM V3のようなダイレクトサンプリング対応(中波・短波受信対応)の受信機を使う必要があるということでした。

 手持ちのSDR受信機 DVB-T+FM+DAB (RTL2832U+R820T2)で試したところ、何も受信できませんでしたが、同機の受信周波数範囲は25~1700MHzのため、10.7MHzは受信範囲外でした。

 RTL-SDR.COM V3の導入とAR5000のSDR受信機化は昨年2022年9月に行い、備忘録に記録していたものの、多忙だったため、こうして記事にするのは遅くなりました。

RTL-SDR.COM V3の購入と導入

 2022年9月にAmazonでSDR受信機 RTL-SDR.COM V3を購入しました。4280円(送料無料)。出荷元がAmazon、販売元がAmazonマーケットプレイスの日本の個人販売業者(?)でした。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0722LZFWN

 RTL-SDR.COM V3のアンテナ入力コネクターはSMA-J(メス)ですので、一緒にSMA-P(オス)/BNC-J(メス)の変換ケーブルを購入しました。アンテナケーブルの取り回しで受信機のアンテナコネクターの破損を避けるためです。798円(送料無料)。出荷元がAmazon、販売元がAmazonマーケットプレイスの中国の製造・販売業者でした。普段はAmazonマーケットプレイスの中華業者は避けていますが、製造も行っているのでまあ大丈夫だろうと楽観視しての購入です。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07HNWVSBV

 RTL-SDR.COM V3は偽物が出回っていて、今までは筐体のロゴが「RTL.SDR」だったりして見た目で簡単に判断できるものだったそうですが、RTL-SDR.COM公式サイトの2022年7月8日のお知らせによると精巧な偽物が出回っているそうです。新しい偽物は筐体やロゴがそっくりですが、サイドパネルのネジの留め位置が斜めになっていないこと、背面にある日付を示すNSY QC ステッカーがないことで判別がつくそうです。

https://www.rtl-sdr.com/watch-out-for-new-rtl-sdr-blog-v3-counterfeits/

 RTL-SDR.COM V3が届いてからまずサイドパネルのネジの留め位置や背面のNSY QC ステッカーを見て本物であることを確認して、更に念のためケース内のプリント基板を見て(サイドパネル両側のネジ合計4本を取ると中の本体が左にずれて簡単に取れます)、公式サイトに掲載されているプリント基板と同じことも確認しました。

https://www.rtl-sdr.com/buy-rtl-sdr-dvb-t-dongles/

 RTL-SDR.COM V3の受信周波数範囲は24~1766MHz、ダイレクトサンプリングモード(中波・短波受信モード)での受信周波数範囲は500kHz~24MHzだそうです。

 SDRソフト(音声受信ソフト)を使用するPCはWindows10(64bit)のノートPCです。ドライバーのZadigのインストール方法、SDRソフトのSDR#、HDSDRのインストール方法については「RTL-SDR DVB-T+FM+DAB (RTL2832U+R820T2) 使用記」に書きましたので、今回は割愛します。

RTL-SDR.COM V3を使ったAOR AR5000シリーズのSDR受信機化

 最初にRTL-SDR.COM V3にログペリアンテナ CLEATE CLP5130-1を直接繋いで、PCでSDRソフトのSDR#、HDSDRでFM、短波、中波の通常受信ができることを確認しました。

 次にログペリアンテナ CLEATE CLP5130-1が繋がっているAR5000のIF出力10.7MHz→RTL-SDR.COM V3のアンテナ入力に接続してSDR#、HDSDRを10.7MHzに合わせたところ、AR5000で受信している局をSDR#、HDSDRで受信することができました!

 SDRソフトはSDR#、HDSDRどちらでもできました。10.7MHzの短波帯で受信するため、SDR#、HDSDRをダイレクトサンプリングモード(中波・短波の受信モード)にする必要があります。SDR#の場合は左上の歯車(Configure Source)をクリック→「Sampling Mode」(デフォルトは「Quadrature sampling」)を「Direct sampling (Q branch)」にします。

 以下、私にとって使い勝手の良いSDR#を使用しました。

 AR5000で受信したFM、短波、中波のどれも受信できます。SDR#はFMのステレオ放送はステレオで聞けます。

 SDR#を10.7MHzに固定してAR5000でチューニングを行う方法、AR5000の受信周波数を固定してSDR#でチューニングを行う方法の両方ができました。

 後者はAR5000のIF出力の設定を「EXT-IF 1」に設定している場合に有効で(詳細後述)、受信している周波数が直読できません。10.7MHzから±で計算する必要があります。SDR#の受信周波数を低くすると実際の受信周波数は高くなります。


SDR#を10.7MHz、AR5000を78.6MHzに合わせ、SDR#で78.6MHzの山梨のFM FUJI(三ツ峠中継局)をステレオ受信中。
周囲の受信局も表示され、バンドスコープとして利用できます。左が受信周波数より高い周波数、右が受信周波数より低い周波数になります。
SDR#を10.7MHzに固定したまま、AR5000の受信周波数を周波数の高い方に回すと、SDR#の波形は左→右に移動していきます。

AR5000の受信周波数を固定したまま、SDR#の周波数を低い方に移動すると、受信周波数は高くなります。
上のスクリーンショットで78.6MHzのFM FUJI(三ツ峠中継局)を受信していたSDR#の周波数10.7MHzから、SDR#の周波数を0.9MHz下げ、9.8MHzにすると79.5MHzの埼玉のNACK5が受信できます。
78.6MHz+0.9MHz=79.5MHz
このAR5000の受信周波数を固定してSDR#でチューニングを行う方法は、受信している周波数が直読できませんので、10.7MHzから±で計算する必要があり、不便です。SDR#を10.7MHzに固定してAR5000でチューニングを行う方法の方が便利でしょう。

 AR5000で受信した電波をSDR#側で受信帯域幅を自由に可変してサイド混信を避けることもできました。


76.4MHzの栃木のRADIO BERRYを受信中。
76.5MHzに超強力な神奈川のinterfm(横浜中継局)が出ているため、AR5000で受信した電波をSDR#側で受信帯域 Bandwidthを絞ってinterfm(横浜中継局)のサイド混信を避けているところ。
アンテナは南向きで、interfm(横浜中継局)に断然有利で、AR5000本体では受信帯域をIF110kHzにしてもinterfm(横浜中継局)のサイド混信に埋もれてRADIO BERRYはほとんど聞こえませんが、SDR#ではinterfm(横浜中継局)のサイド混信を避け、音質は若干劣るもののステレオで受信できます。
これはSDR#の受信帯域自由可変の良さを証明するためにわざとRADIO BERRYにとって劣悪な状況下にしたもので、もちろんアンテナを栃木方向に向ければAR5000本体でもRADIO BERRYはinterfm(横浜中継局)の混信をほとんど受けることなく良好に受信できます。

 AR5000の受信帯域をSDR#で帯域録音することもできました(AR5000のIF出力の設定を「EXT-IF 1」に設定している場合)。これも大きな利点です。

★AR5000のIF出力「EXT-IF 1」と「EXT-IF 2」の違い

 AR5000のIF出力の切り替えは「FUNC」→「kHz(CONFIG)」→「UP」2回を押すとメニューが出てきて、「EXT-IF OFF」(出力OFF)、「EXT-IF 1」(IFフィルター前からの出力。バンドスコープなどに使用)、「EXT-IF 2」(IFフィルター後からの出力)が選択できます。

 ここまでの受信はAR5000のIF出力を「EXT-IF 1」して受信を行いました。

 「EXT-IF 1」では、AR5000本体からの受信音とSDR#からの受信音を同時に聞くと、AR5000本体からは混変調オバケが出ていないのに、SDR#からは混変調オバケが出ている部分がありました。これはFMと中波で起き、短波9MHz帯では起きていないようでしたが私が気付かなかっただけかもしれません。

 「EXT-IF 1」ではFMと中波の感度は微弱な受信音で比べるとSDR#よりもAR5000本体で聞いた方が感度がやや良いです。AR5000では聞こえている微弱な受信音がSDR#では混変調オバケに潰されてしまっている部分がありました。

 「EXT-IF 2」では、「EXT-IF 1」で出ていた混変調オバケがFM、中波共に消え、「AR5000本体で聞こえない混変調オバケがSDR#で聞こえる現象」がなくなりました。「EXT-IF 2」ではAR5000本体と「同じ音」がSDR#から聞こえます。つまり感度が全く同じになりました。もちろんAR5000本体で出てしまう混変調オバケはそのままSDR#でも聞こえます。

 しかも、「EXT-IF 2」ではSDR#のステレオ分離度が良いため、西欧仕様チューナー SONY ST-SA5ESや、AR5000のIF出力から繋いだICOM TV-R7100J・TV-R7000Jでは微弱なFM局がステレオにならないのに、SDR#ではステレオになるようになりました。ステレオ分離度の良さはAR5000のIF出力+SDR#>AR5000のIF出力+TV-R7100J・TV-R7000J>西欧仕様チューナー ST-SA5ESの順です。

 一方で、「EXT-IF 1」の時に受信周波数の周囲に表示されていた周辺周波数局が「EXT-IF 2」では消えてしまい、バンドスコープができなくなってしまいます。AR5000の受信周波数を固定してSDR#で周波数を動かすと、周囲の局が全く受信できず、AR5000の受信周波数を固定してSDR#でチューニングを行う方法ができません。SDR#の周波数を10.7MHzに固定してAR5000側でチューニングを行う方法はできます。この場合は受信局が近づくと突然波形が現れます。

 「EXT-IF 2」では周囲の局が受信できないので、帯域録音もできません。


AR5000のIF出力を「EXT-IF 2」にして、78.6MHzのFM FUJI(三ツ峠中継局)を受信中。
「EXT-IF 2」では、「EXT-IF 1」の時に受信周波数の周囲に表示されていた周辺周波数局が消えてしまい、バンドスコープができなくなります。帯域録音もできません。

 「EXT-IF 1」と「EXT-IF 2」の選択は、用途によって、ステレオ受信を取るか、多少のオバケがありながらも帯域録音を取るかで使い分けることになりそうです。

総合所感

 RTL-SDR.COM V3を使ったAR5000のSDR受信機化は、(1) AR5000で受信した電波をSDR#側で受信帯域幅を自由に可変してサイド混信を避ける、(2) AR5000で受信したFMステレオ放送をステレオで聞く(今までのようにTV-R7100JやTV-R7000Jが必須でなくなる)、(3) 多少の混変調オバケがありながらもAR5000の帯域録音をする、(4) バンドスコープ、には使えるかなという印象です。

 帯域録音(AR5000のIF出力「EXT-IF 1」のみ可能)をしようとすると、AR5000本体より若干感度が落ち、混変調オバケが出る部分があるため、AR5000本体の受信感度の良さを維持したまま帯域録音をする最強の受信機器ができるのではないかという夢は叶いませんでした。

 この記事は私のように現在所持しているAOR AR5000シリーズ(私はAR5000A+3、AR5000を所持しています)を受信機として使用しながら、SDRの良さを取り込む方法を記載したものです。

 現状、FM・TV-DXをするなら、受信機はSDR受信機より感度が良いAR5000シリーズ(どれでも良いですが最終機のAR5000A+3が若干良いようです)と、帯域録音・受信帯域幅自由可変・FMステレオ放送受信などAR5000シリーズにできないことができるSDR受信機のAirspy R2を併用するのが最も良いようです。資金的な面でAR5000シリーズを購入できない場合は若干感度が劣るもののAirspy R2だけでも良いでしょう。


All reported by "Konsu"
in Tokyo, JAPAN
with
RX: AOR AR5000A+3, AOR AR5000, RTL-SDR.COM V3
ANT: CREATE CLP5130-1

受信地
東京西部