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WEST TOKYO TV-FM DX

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海外用チューナー Pioneer F-208 使用記

初版 2003.03.09 UP
更新版 2003.11.02 UP

画像削除 2014.11.24 UP / 2016.04.11 UP


海外用チューナーの入手はこれが最後のチャンス?

 前々から購入しようと思っていた海外用チューナーを入手しました。90~108MHzのステレオ受信にはIC-R7000+TV-R7000Jの組み合わせでも満足出来そうですが、それでも海外用チューナーを入手したのには自己満足(笑)と、チューナーの方が感度や音質が良さそうだということもあります。

 最初に2002年12月にLAOXに電話で問い合わせたところ、単体でのチューナーは今はもうないと言われてしまいました。確かに国内用のチューナーですら今は少なくなってきていますので、この返答も納得出来ないことではありませんでした。たとえメーカーのHPにチューナーが掲載されていてもそれが現地向けだったりして、国内にメーカーからの流通ルートがないとどうしようもないそうです。

 76.0~108.0MHzが受信出来るONKYOの国内用チューナーT-422M(S)の購入も考えましたが、チューニングがタッチボタン式になっていて、ダイヤルノブ式でないのはDXには辛いです。ONKYOのチューナーには76.0~108.0MHzが受信出来るものが多いですが、ONKYOにメールで数機種について問い合わせたところ、ダイヤルノブ式で76.0~108.0MHzが受信出来るものはありませんでした。かと言って、いくら76.0~108.0MHzをカバーしていてもCD、MDなども一体化されたシステムコンポまで買う気はありませんし、そもそもS/N比が悪そうです。

 数週間めげていましたが、2003年1月中旬にダメもとで海外用製品をネット上で扱っている、マサニ電気海外電気CLUBにメールで問い合わせたところ、両店共、チューナーを扱っているとの返事でした。アンプとチューナーが一体になったReceiverというもののことかなと思いつつも、とりあえずカタログを送ってもらうことにしました。

 各メーカーのHPを見ると分かりますが、アメリカではチューナー単体というのはなく、もっぱらアンプとチューナーが一体化されたReceiverというものが売られています。一方、ヨーロッパやアジアではチューナー単体で売られています。なぜアメリカではReceiverという形で売られているのかは私もよく知りません。ご存知の方がおられましたらお教え頂ければ幸いです。アメリカで売られているReceiverもAV ReceiverというAVアンプのようなものが多く、チューナーに比べるとS/N比が悪そうな上に、値段も高くなりそうです。

 さて、マサニ電気からも海外電気CLUBからも全く同じカタログが送られてきました。Pioneerの"Duty Free Audio/Video Products 2002-2003"(英語)と、SONYの"Sony Overseas Models Audio Products Catalog"(2002.10)(英語、日本語、中国語、韓国語、スペイン語、ロシア語)です。

 単体チューナーとしてはPioneerのカタログにF-208という機種のみがありました。このF-208はチューニングがダイヤルノブ式で希望通りです。Made in Japanと付記してあります。

 F-208をネットでも調べたところ、PioneerのシンガポールURLのページに載っていました(オーストラリアURLのページの方にも載っていましたが、シンガポールの方が見やすいので……)。ただ、あまり詳しい仕様は書いてありません。
http://www.pioneer.com.sg/products/ha_tuner/f208.asp

 また、ヨーロッパURLのページにはRDS機能が付いているF-208RDSという機種が載っています。こちらは詳しい仕様が書いてあります。
http://www.pioneer-eur.com/eur/product_detail.jsp?product_id=518&taxonomy_id=42-94

 F-208について両店に問い合わせたところ、両店共、入手可能とのことでした。今回は値段から判断してマサニ電気の方に注文をし、2003年2月下旬にPioneer F-208を入手しました。値段は13400円+送料+消費税でした。

 先にも書いたように海外用単体チューナーの国内での購入は今後不可能になってくる可能性が大きく、これが最後のチャンスになるかもしれません。今回海外用チューナーの購入を検討し始めた当初、当HPの掲示板でもおなじみの某氏にお尋ねしたところ、某氏が数年前にLAOXで海外用チューナーを購入した時点で、既に海外用チューナーの在庫はなく、展示品としてあった機種のみだったそうです。

写真

 いつも通り写真から紹介します。画像をクリックすると、大きなサイズの画像が別窓で開きます(一部除く)。


本体正面

本体正面アップ(1)

本体正面アップ(2)

本体正面アップ(3)

本体裏側

本体裏側アップ(1)
アンテナ接続部分。

本体裏側アップ(2)
パネル、音声出力、Pioneer製品のコントロールターミナル接続部分。中国語の記載がおたく心をくすぐります(笑)

本体裏側アップ(3)
電圧切り替え部分。

本体の電源プラグ。
日本国内用の電源プラグになっており、そのまま日本国内の電源コンセントに差し込めます。電圧も特に問題ありません(主な仕様参照)。

付属品

取説。取説は英語、スペイン語、中国語(簡体字)で書いてあります。

シャックにおさまった所です。
主な仕様(取説より抜粋)

FMの受信周波数…87.5~108MHz
FMのS/N比…ステレオ 73dB(at 85dBf)、モノラル 76dB(at 85dBf)
アンテナ入力…75Ω
電源…AC 110/120-127/220/240V、50/60Hz

その他の詳細は取説の"SPECIFICATIONS"のスキャン画像を見て下さい。別窓で開きます。

☆以下、FMバンドに限って書いていきます。

選局方式

 まず選局方式ですが、ダイヤルノブを回して合わせる方法(Manual Tuning Mode)と、テンキーで入力する方法(Direct Access Tuning)があります。

 ダイヤルノブを回した時の周波数ステップは0.05MHz固定で、FMバンド内をサーチする時にはちょっと遅くてイライラします。0.05MHzになっているのは、タイのFMが0.25MHzステップになっているためでしょう。ダイヤルノブは0.05MHzおきにカチカチ止まる感じですが、重からず軽からずで丁度良い程度です。

 一方のテンキー入力はDXには大変便利な選局方式です。例えば、105.2MHzを入力する時には[DIRECT]ボタンを押した後、[1][0][5][2][0]と入力します。最後の「0」まで入力しなければなりませんが、忙しいEスポ受信時にもこの程度でしたら、それほど苦になりませんでした。

 DXワッチ時にはイライラする点もありますが、この2つの選局方式を組み合わせて選局すれば、まあまあ使えるかなと思いました。

 この他にオート選局(Auto Tuning Mode。良好に受信出来る局をサーチして選局していく方法)と、プリセット選局(Priset Station Tuning Mode。プリセットしてある周波数をダイレクトに選局する方法)があります。これらは必要に応じて使える程度でしょうか……。

感度・選択度

 購入前から気になっていたのがこれです。入手出来る機種が少ない現在、あまり期待出来ませんでしたが、半分正解でした。まず、取説のS/N比のステレオ 73dB、モノラル 76dBを見てガクっとしました。仕方ありませんが……(^_^;)

☆感度

 感度ですが、当地で87.5~90MHzの間で常時まともに受信出来る88.8MHzのNHK静岡FM放送で比較調査してみました。

 比較調査したのは、同機 Pioneer F-208、SONYの国内用チューナー ST-SA50ES(S/N比:ステレオ 84dB、モノラル 90dB)、IC-R7000+TV-R7000Jの「TV-R7000Jからの出力」、の3つです。

 結果はやはりST-SA50ESが一番でした。受信信号強度が一番強く、ステレオで受信出来ました。

 2位はIC-R7000+TV-R7000Jの「TV-R7000Jからの出力」です。受信信号強度がST-SA50ESよりちょっと下くらいです。しかし、ステレオ分離はせず、ステレオ受信は出来ませんでした。

 最下位は今回購入したPioneer F-208でした。受信信号強度がST-SA50ESやTV-R7000Jよりも差があり、弱かったです。もちろんステレオ分離はせず、ステレオ受信は出来ませんでした。

 ST-SA50ESより悪いのは仕方ないとしても、TV-R7000Jに負けたのはちょっとショックでした。しかし、問題はあくまでもステレオ分離度、つまりステレオ受信出来るかどうかということと、ステレオ受信時の選択度、つまり隣接局の混信をどれだけ避けられるかです。モノラル受信だけでしたら、IC-R7000単体で受信すればいい訳ですから……(もちろんIC-R7000単体の方が、「TV-R7000Jからの出力」よりも感度・選択度は上です)。

 そこで2003年のEスポシーズンにはF-208とTV-R7000Jの比較対決をしてみました。

☆ステレオ分離度・ステレオ音質・選択度

 まず、ステレオ分離度ですが、ステレオ受信した97.5MHzの中国の江蘇電台文芸頻率など数局で調べたところ、F-208とTV-R7000Jはほぼ同格で、フェーディングで信号が強弱する中、ステレオになる時間はほぼ同じでした。ややF-208の方が上ですが、TV-R7000Jがここまで良いものは思いませんでした。

 次にステレオの音質を聞き比べてみました。ステレオで受信出来た87.6MHzの北京人民広播電台文芸広播を同時受信・同時録音して、後で聞き比べてみたところ、音質はF-208の方が断然上でした。TV-R7000Jは音がこもったような感じに聞こえます。ステレオチューナーなのでF-208の方が上なのは当然と言えば当然ですが、F-208を買ってよかったです……。

 最後に選択度です。101.2MHzの中央人民広播電台-1と101.3MHzの山東広播文芸頻道が並んで良好に入感していた時に、選択度のチェックをしてみました。両機で同時に聞き比べたところ、選択度はほとんど同じですが、TV-R7000Jの方が若干上でした。選択度ではTV-R7000Jに若干軍配が上がったという感じです。

 TV-R7000Jに負ける点はあったものの、F-208の購入目的は感度(ステレオ分離度)とステレオ音質にありましたので、これらの点、特にステレオ音質で優ったのは満足の行く結果でした。ただし、強敵ST-SA50ESにはステレオ音質でも完敗で、ST-SA50ESの方が断然上です。

強制スケルチ

 F-208では受信局のいない周波数ではスケルチが効いてしまい、無音状態になってしまいます。強制的なもので解除は出来ません。

 これはDXにとっては欠点ですが、私の場合はブースターを通しているせいかもしれませんが、入感局のない周波数でも、ほとんどの周波数でノイズが受信出来るため、そのノイズでスケルチが解除されています。スケルチが解除されて、そのノイズが聞えますが、かと言って、そのノイズは受信局の障害になるほどでもありません。

 ラッキーと思いましたが、入感局のない周波数でスケルチが解除されていても、一旦アンテナ切り替え機を別の受信機に切り換えてまたF-208側に戻すとスケルチがかかってしまいます……。ダイヤルで周波数を上か下にずらすとまたスケルチが解除されますが、ちょっとうざいです。また、場合によっては入感局がないとスケルチが解除出来ない場合もあります。

 私の使用状況下では、入感局がなくてもスケルチが解除されている場合が多いですが、時と場合によってスケルチが解除出来ない場合も少なからずあるのは、ちょっとウザく感じます。

 もちろん入感局のある周波数ではスケルチは解除されています。

 もう一つ、Eスポ受信時に受信局のフェーディングが激しいと、フェーディングの谷間では一瞬スケルチがかかって無音になってしまいます。せっかくステレオ受信出来ている局が一瞬ですが、無音になってしまうのは悲しいものがあります。

IFバンド切り替えはなし

 IFバンド切り替え、つまり選択度の切り替えはF-208にはありません。欲しい機能ですが、チューナー機器の現状から言って仕方ないでしょう。

総評

  ST-SA50ESよりS/N比が良い(感度が良い)とは言えないのは仕方ないとしても、強制スケルチはちょっとウザく感じます。その他、周波数ステップが0.05MHz固定、IFバンド切り替えなし、などFM-DXに使うのに欠点はいくつかありますが、海外用チューナーの国内での入手のチャンスが、これで最後になるかもしれないことを考えると、これらの欠点も許せる許容範囲内というか、仕方ないと言ったところでしょうか……(苦笑)

 なんだかんだ言っても、2003年のEスポシーズンにはF-208で沢山の海外FM局をステレオ受信しましたし、それなりには満足しています。

 今後、従来のように柔軟性があり、S/N比の良い海外用チューナーの登場を望みたいとは思っていますが、やはり現状では無理な方向に向かっているのでしょうか……? 少なくとも強制スケルチのない機種が出てきて欲しいなぁとは思っています。


All reported by "Konsu"
in Tokyo, JAPAN