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TOP > Special Reports > SONY ICF-SW7600GRと中華ラジオ TECSUN PL-398MP比較
2020.01.11 UP
メイン受信機は固定受信機のAR5000A+3やFMチューナーを使っているため(AR5000A+3の前はIC-R7000をメイン受信機で使用)、ポータブルラジオはEスポ受信時の短波・中波パラチェック用、非常時持ち出し用、気楽にどこでもラジオを聞きたい用に持っています。
これまでSONY ICF-SW55→TECSUN PL-390→TECSUN PL-398MPと買い替えてきました。
長年SONY ICF-SW55を使っていましたが、さすがに古くなってきたため2018年4月に評判の良い中華ラジオ TECSUN PL-390を9800円で購入。しかし、購入時からボリュームUPが不良になっており、同機は既に販売終了になっていたことから、2019年2月にPL-390の後継機種現行機のTECSUN PL-398MPを8580円で購入しました。
PL-398MPはPL-390にSDカード再生機能が付いただけで、性能はPL-390と同じようです。AIWA AR-MDS25はPL-398MPのOEM商品のようですので、少々値段が高くなりますが日本語表示と保証が欲しい方はこちらが良いかもしれません。
しかし、PL-398MPはFMは良いのですが、DSP処理を行っているためか短波・中波受信ではフェーディングや電波が弱い時に出るバサバサ音がかなり気になっていて不満を感じていたため、2019年12月にPLLシンセサイザー機のSONY ICF-SW7600GRの中古を約3万円で購入しました。
TECSUN PL-390
https://www.amazon.co.jp/dp/B00567DB12
TECSUN PL-398MP
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IJBXHTI
AIWA AR-MDS25
https://www.amazon.co.jp/dp/B07KVHFSM2
メーカーサイト
http://www.jp-aiwa.com/products/audio/ar-mds25/
SONY ICF-SW7600GR
https://www.amazon.co.jp/dp/B00009VSDM
メーカーサイト
https://www.sony.jp/radio/products/ICF-SW7600GR/
これまで様々なブログなどでICF-SW7600GRとDSP中華ラジオの比較記事が書かれていて食傷気味かもしれませんが、両機を手に入れましたので、私なりに備忘録を兼ねて比較記事を書いてみたいと思います。
以下の比較では、ICF-SW7600GR、PL-398MP両機共、ロッドアンテナを伸ばし切った状態で室内の同じ場所で受信比較調査を行いました。特記ない限り、外部アンテナは未接続での受信です。
2019年12月~2020年1月比較調査。
ICF-SW7600GRは2001年に販売開始され、2018年2月頃に生産終了した現時点で最後の日本製BCLラジオです。メーカー希望小売価格40000円。
2020年1月現在では新品はほとんど販売されておらず、Amazonマーケットプレイスやヤフオクで新品を見かけますが数万円上乗せした価格で販売されており、どうしても新品が欲しい方はそれを購入しても良いと思いますが、私はサブ受信機という使用用途のためコスパから中古品を購入しました。
私が購入した中古品はネットで見かける画像と比較しますと、梱包箱の形から見て、北米で販売され日本ではAmazonで低価格で販売された逆輸入品と呼ばれるもののようです。電源アダプターが付属していなかったり、付属品が日本販売品と異なりますが、受信機本体は同じようです。
取扱説明書に日本語が無かったため、日本語の取扱説明書(英語兼用)のPDFファイルをネット上から手に入れました。
外部アンテナ入力端子には「AM EXT ANT」と書いてありますが、実際の受信で試してみると、中波、長波、短波だけでなく、FMも外部アンテナ入力が有効になっています。
ただ、取説によるとこの「AM EXT ANT」端子は推奨アンテナ(SONY AN-1、AN-102、AN-LP1)専用端子で、これらのアンテナに電源供給するための直流(DC)電圧が流れており、取説に「AM EXT ANT端子に推奨以外の外部アンテナをつながないでください。この端子にはアンテナ用電源として直流電圧が出力されています。」と書かれています。
ApexRadioから販売されているBNC-J/3.5Φモノラルプラグ変換ケーブルの35BNC-2と35BNC-AT3はコンデンサでDC電圧を切り離しており、ICF-SW7600シリーズの外部アンテナ入力変換ケーブルとして推奨されています。ICF-SW7600GR生産終了から数年経ち、この手の製品は今後品薄になる可能性を考えて連続可変アッテネータ付きの35BNC-AT3を購入しておきました。
BNC-J/3.5Φモノラルプラグ変換ケーブル
ApexRadio 35BNC-2
https://www.amazon.co.jp/dp/B08GYTWY38
BNC-J/3.5Φモノラルプラグ変換ケーブル 連続可変アッテネータ付き
ApexRadio 35BNC-AT3
https://www.amazon.co.jp/dp/B0197NLWOI
以下の比較では、ICF-SW7600GRは特記ない限り次の設定にしています。
AM MODE : NORM
TONE : MUSIC
ATT : OFF
比較評価
ICF-SW7600GR>PL-398MP
ダイヤルではなくボタンでのチューニングですが、外側の「|←」「→|」ボタンで中波・長波は9kHz(or 10kHz)ステップ、短波は5kHzステップでサーチして、内側の「← →」ボタンで中波、短波共に1kHzステップで細かく微調整出来るのでマニュアルチューニングがやり易いです。
FMは外側の「|←」「→|」ボタン、内側の「← →」ボタンどちらも0.05MHzステップです。内側の「← →」ボタンを0.01MHzステップにして欲しかったですが、PL-398MPに比べたらチューニングし易いです。
マニュアルチューニングやダイレクトキー選局に切り替えるには「VF」ボタンを押します。受信機のスイッチを入れた時にチューニングモードがわからず、「TUNING」ダイヤルを回したらメモリチューニングだったということがよくあり、「VF」ボタンを押すと周波数表示が点滅して切り替わりますが、この流れが少し煩わしいです。
ダイヤルでのチューニング自体は良く、FMは0.01MHzステップ、中波・長波・短波は1kHzステップでチューニング出来るのですが(取説にSlow tuning modeと書かれているモード)、ダイヤルを勢いよく動かすと突然ステップ間隔が大きくなり(取説でFast tuning modeと書かれているモード)、FMは0.1MHzステップ、中波・長波は9kHz(or 10kHz)ステップ、短波は5kHzステップに切り替わり、周波数をしっかりサーチ出来ずに先に進んで行き過ぎてしまいます。
各々のモードは自動切り替えで手動切り替えは出来ず、大変不便です。
比較評価
ICF-SW7600GR≧PL-398MP
PAGEと呼ばれるものが0~9まで10個あり、各々のPAGEに10個、合計100個メモリ出来ます。PAGEの3にある5のメモリを呼び出す時は「PAGE」ボタン→「3」ボタン→「5」ボタンで呼び出します。
更に目覚まし用のSTANDBY MEMORYに2個メモリ出来るので、厳密には102個メモリ出来ます。STANDBY MEMORYの呼び出しはaボタン、bボタンの一発呼び出しです。
呼び出したプリセット周波数はマニュアルチューニングの内側の「← →」ボタンや外側の「→|」「|←」ボタンを押すとすぐにマニュアルチューニングに移れるので便利です。
プリセット登録は周波数を選局し、登録したいPAGEの数字ボタンを押した後、「ENTER」ボタンを押しながら数字ボタンを押すとその数字にプリセットされます。プリセット時にピッと音が鳴るのでプリセット登録されたことがすぐにわかります。中波、長波、短波、FMを混在して登録出来ます。
しかし、中華ラジオの数百個メモリに比べると102個は古いラジオと言え少ないと感じてしまいます。
中波、長波、FMは各々100個、短波は250個、合計550個メモリ出来ます。短波、中波、長波、FMを別々にメモリする方式になっており、放送局ごとや国ごとのように短波、中波、長波、FMが混在したメモリ羅列に出来ないのが不便です。
メモリを呼び出すには、メモリチューニングになっていない時は「VM」ボタンを押すとメモリ番号表示が点滅して切り替わり、「TUNING」ダイヤルを回してプリセットしてある周波数を切り替えるか、数字ボタンを押して直接呼び出しますが、前者の方が楽です。
プリセット登録は周波数を選局して「M」ボタンを押し、「TUNING」ダイヤルを回すか直接数字ボタンを押して目的のプリセット数字に合わせ、数秒待つか「M」ボタンを押すと登録されます。
しかし、この時にどのプリセット数字にするか戸惑っている間に数秒後に強制的にプリセットされてしまい、消したくないプリセット周波数を上書きしてしまうことがあります。プリセット数字を考える時間を与えてくれないのは不便です。
ICF-SW7600GR、PL-398MP共に短所があり、PL-398MPは消したくないプリセット周波数を上書きしてしまう恐れがあったり短波・中波・長波・FM混在のメモリ羅列に出来ない短所があり、ICF-SW7600GRはプリセット登録はピッと音がしてやり易いのですがメモリ数が少ないという短所があり、ICF-SW7600GR≧PL-398MPとしました。
FM比較評価
PL-398MP>ICF-SW7600GR
短波、中波比較評価
ICF-SW7600GR≒PL-398MP
短波、中波聞き易さ比較評価
ICF-SW7600GR>PL-398MP
ロッドアンテナを伸ばした状態では感度はPL-398MPの方がやや良く、電波の弱いFM局がやや良く受信出来ます。
外部アンテナを繋げた時にはその差は顕著に出て、ICF-SW7600GRは混変調オバケだらけになるのでアッテネーター(ATT)で入力信号を調整してやらないと、電波のやや弱いFM局は混変調オバケに埋もれて受信出来ず、調整して受信出来てもアッテネーターを通しているので受信電波は弱くなり、電波のやや弱いFMステレオ局はモノラル受信が多くなります。
一方、PL-398MPは外部アンテナを繋げても混変調オバケはほとんど出ず、電波のやや弱いFM局もそのまま受信することができ、FMステレオ局はステレオで良好に受信出来ることが多くなります。
(この部分のみ外部アンテナを繋げての受信例)
また、ICF-SW7600GRはFMではデフォルトのATT OFF(アッテネーターオフ)だと電波が出ていない部分のノイズすら強制的にステレオにしてしまいステレオザラザラ音が気になるのでATTをONにして調整する必要があります。その後に短波や中波を受信する時はATTをOFFに戻さないといけないので少々煩雑です。
一方のPL-398MPではそのような現象は起きません。
ICF-SW7600GRはFMはステレオ受信のみで、FMステレオ放送をモノラル受信することが出来ません。そのため電波が弱くてステレオノイズで聞きにくいFMステレオ局を明瞭に聞くためにモノラル受信をするということが出来ません。
一方、PL-398MPは「ST.」ボタンでステレオ受信のON/OFFが出来るので、電波が弱くてステレオノイズで聞きにくいFMステレオ局をモノラルで受信して明瞭に聞くことが出来ます。
短波、中波の感度自体は両者同じように感じます。
しかし、PL-398MPはDSP処理を行っているためか、短波・中波受信では電波強度を段階的に処理を行っているようで、フェーディング時や電波の弱い局の受信時には段階処理の時に出るバサバサ音がかなり気になり、受信局が聞き辛くなります。これがPL-398MPに不満を感じ、ICF-SW7600GRを購入した最大の理由です。
一方のICF-SW7600GRはPLLシンセサイザー機ですので、短波・中波のフェーディング時や電波の弱い局の受信時にバサバサ音が出ることはなく、自然な感じの受信音で聞き辛くなることはありません。
FM比較評価
PL-398MP>ICF-SW7600GR
短波、中波比較評価
ICF-SW7600GR=PL-398MP(BW 3kHz)
電波が強力な局を受信して周波数を上下にずらし、上下何kHz、何MHzまで被ってくるのかを調べてみました。
PL-398MPは短波、中波、長波では選択度切り替え BAND WIDTH(BW)が6, 4, 3, 2, 1kHzと可能なので単純比較は出来ませんが、ICF-SW7600GRに音質が近い3kHzに設定しての比較です。
2019年12月中旬受信比較調査。受信地:東京西部
受信局、周波数、受信状態 | ICF-SW7600GR | PL-398MP | ||
下 | 上 | 下 | 上 | |
J-WAVE 81.3MHz SINPO55555 |
0.3MHz | 0.3MHz | 0.18MHz | 0.18MHz |
InterFM897 89.7MHz SINPO55555 |
0.25MHz | 0.25MHz | 0.16MHz | 0.16MHz |
TBSラジオ 954kHz SINPO55555 |
13kHz | 12kHz | 13kHz | 13kHz |
ニッポン放送 1242kHz SINPO55555 |
15kHz | 13kHz | 14kHz | 13kHz |
KBSワールドラジオ日本語放送 6155kHz 17時台 SINPO55544 |
7kHz | 5kHz | 7kHz | 5kHz |
朝鮮の声放送日本語放送 7580kHz 20時台 SINPO55544 |
7kHz | 5kHz | 7kHz | 5kHz |
短波、中波の選択度はほぼ同じですが(PL-398MPの選択度 BWは3kHz設定)、FMの選択度はPL-398MPが抜群に良いのがわかります(FMは両機共選択度切り替え無し)。
比較評価
ICF-SW7600GR>PL-398MP
選局はボタン式ですが、音量は「VOLUME」ダイヤルのダイヤル式で、滑らかに音量が調整でき、PL-398MPのような段階はないので大変調整しやすいです。
「VOLUME」ダイヤルのダイヤル式ですが、0(無音)~30の31段階になっており、5~7、特に6~7の音量差が少し大きめで、スピーカーで聞いている時に急に音が大きくなって不便なので、ここの段階を細かくして欲しかったところです。
比較評価
PL-398MP>ICF-SW7600GR
電池は単3電池4本。
AC電源は電源入力プラグがEIAJ極性統一形プラグ#2、プラグ径φ4.0mmメスタイプ、センタープラス、DC IN 6Vになっており、日本バージョンの付属ACアダプター AC-E601は海外対応の入力 AC100-120V/220-240V 7VA 50/60Hz、出力 DC6V 300mAですが、既に販売終了になっています。日本で使うだけでしたらこれに合った出力のACアダプターを選べば良いのですが、SONY純正品ACアダプターで現在発売されているものはありません。私はSONYのAC-E60M(入力 AC100V 7VA 50/60Hz、出力 DC6V 400mA)を入手して使っていますが、メーカー純正ACアダプターの入手が難しくなりつつある点はマイナスです。
電池は単3電池3本。
AC電源は電源入力プラグがmini USBのmini-Bメスタイプ、DC-IN 5V 250mAになっており、スマホなどのUSB ACアダプターが流用出来るので、ACアダプターに悩む必要のない点は非常に評価出来ます。
更にACアダプターからニッケル水素電池のような充電式電池に充電して使用することができ、充電式電池に充電しながらの使用も可能で、これも大きく評価出来るでしょう。
外観はPL-398MPは値段相応のチープ感でおもちゃのように見えます。ICF-SW7600GRの外観は洗練された良いセンスで気に入っています。
操作性はPL-398MPは各ボタン操作がやり辛い気がします。慣れてきても操作ミスをしそうになります。
ICF-SW7600GRは各操作が操作し易く、使い手のことを考えた日本人らしい設計であると痛感しました。PL-398MPを使った後には特にそう感じます。
FMの受信範囲はPL-398MPは64.0~108.0MHzで、64.0~76.0MHz内のロシアバンドのロシアFM、60,70MHz帯の中国FM、C2,C3chの中国TV音声なども受信可能になります。ICF-SW7600GRはFMは76.0~108.0MHzのみの受信範囲です。
FMステレオ表示はPL-398MPはステレオになった時のステレオ表示がありますが、ICF-SW7600GRにはステレオになった時のステレオ表示がありません。
ICF-SW7600GRはLINE OUTがありますがFMステレオ放送はヘッドホン端子に何か刺さっていないとステレオで出力されず、何も刺さっていない時はモノラルで出力されるので不便です。
PL-398MPにはLINE OUTはありません。
ICF-SW7600GRの短波や中波受信で使える同期検波(SYNC LOCK)は良好な局は若干聞き易いのですが、フェーディングでSYNC LOCKが外れたり入ったりする時に「キュ」という音が入り放送内容が聞き取れなくなるので、聞き易くするはずの同期検波が逆に聞き取りの邪魔をしてしまって、同期検波を使わない方が聞き易いです。
FM受信は感度、選択度共にPL-398MPが断然良いです。外部アンテナを繋げると差が顕著に出ます。ICF-SW7600GRでは受信出来ない64.0~76.0MHzをカバーしている利点もあります。
短波、中波受信は両機の感度は変わりませんが、PL-398MPはやはりフェーディングや電波が弱い時のDSP処理によるバサバサ音が気になって聞き辛く、ICF-SW7600GRが聞き易いです。
これらからFMをメインで受信するならPL-398MP、短波・中波をメインで受信するならICF-SW7600GRという私見結果となりました。
私の場合、FMのメイン受信機は固定受信機のAR5000A+3やFMチューナーを使っており、ポータブルラジオはEスポ受信時の短波・中波パラチェック用、非常時持ち出し用、気楽にどこでもラジオを聞きたい用に使っていますので、ポータブルラジオはICF-SW7600GRを使うこととなり、PL-398MPは引き出し行きとなりました。
現在のFMのメイン受信機に不具合が出れば一時的にPL-398MPの出番が来たり、外出先でFM受信をすることがあればPL-398MPを使用することがあるかと思います。また、PL-398MPはAC電源にスマホのUSB ACアダプターが流用出来たり、充電式電池を使用出来る点は大きいと思います。
現在、ICF-SW7600GRには外部アンテナ ApexRadio 303WA-2を連続可変アッテネータ付きBNC-J/3.5Φモノラルプラグ変換ケーブル ApexRadio 35BNC-AT3を経由して外部アンテナ端子に繋いで使っています。303WA-2に連続可変アッテネータ付き35BNC-AT3は過剰使用と思いますが、35BNC-AT3が必要な外部アンテナを接続する時のために使用しています。
All received and reported by "Konsu"
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